日本語を使わせて。

中国駐在員33歳。日本語を話したくて

【雑記】#3「ヤンキー介護職に就く」

暇な時間は後輩のヒロちゃんとゲームをする。
ヒロちゃんは所謂”グレた子”で、職歴も実体のない組織がほとんどだった。
そんな彼が「介護職で働こうと思います」と口にしたときは驚いたし大賛成した。
「いつか自分のおばあちゃんのお世話をしたい」という健気な動機がなんだかヒロちゃんらしいなと微笑ましかった。

さらに驚きなのが、すんなりと面接に受かったことだった。

「刺青、OKでした」

 

≪≪ヤンキー介護職に就く!≫≫


 果たして人種の異なる環境で彼は馴染めるのか。コスモス園にラフレシアが咲くような絵面である。
初出勤を終えた彼の感想は「みんな良い人過ぎでした。こんなに優しく指導されたことありません。」と、ひどく感激していた。
しかし、遅番早番のシフトをこなし、日々業務をこなす中でヒロちゃんの心は穏やかではなかった。
「みんな腹の中で何考えとるのか見えなくて、気持ち悪いんですよね。」

ニコニコしてる人も裏では同僚の陰口叩くという現場の、言わば「社会の日常」を知って思ったことらしい。
「みんな自分がまともだと思っているんでしょうかね」

そうだねぇ・・・“まとも”とは…いわゆる『常識』としてさ、
常識は国ー地域ー会社ー家族と枝分かれの数だけあるし、友人関係も各々の常識が釣り合っているから成立するものと思うよ。
大所帯になれば『まとも純度』のようなものの維持こそ生命線だし。
陰口は「私たちはまともだよね?」と確認し合う作業のようなもので。

例えば、福岡の人間が「福岡と言えばジンギスカンよ」と言えば確実にこの人は福岡にとって邪魔だし不純物となるように、ヒロちゃんの職場では『ベテランに対して意見できない』という共通認識を維持することで連帯感を生んでいるらしい。
私から言わせれば珍しいことではないが、これを変だと憤りを感じれるのがヒロちゃんの純なところで、直情的な獣の部分はまだ未熟だが、そこが良いキャラでもある。

 

施設向け 】身体拘束廃止研修(新入社員研修)【 入社時必須 】 - YouTube
介護業界には『身体拘束』がある。
過度な身体拘束は虐待とも捉えられ、ニュースのトピックとして目にすることがある。
彼の職場ではベテランスタッフがそれに値する拘束を利用者に強いている実態があるそうで、我慢ならず彼はベテランに意見したらしい。

「これじゃ刑務所となんらかわらんやないですか」と。
ベテランスタッフもそれを真摯に受け止めたのか、「確かにその通りやね、気が付かなかった」と言う。

その話は施設内に広がったそうで、他スタッフもどうやらベテランの身体拘束に疑問を感じていたらしい。
おかしいと思いつつ黙認していたスタッフにヒロちゃんはまた苛立つ。
「三木さんだったらどうしますか?」と問われた。
自分をフォローしてくれる人間がいるなら、会議の場で報告してみんなで決まり事をつくるかな。
とぼんやりした回答。


ヒロちゃんは新人なんだから何でも質問してさ、ベテランの業務姿勢を見直すように誘導することはできるかもしれないね。「何も知らない新人」って武器だぜ。

「この拘束って白線超えてないですよね?」「苦しそうですけど、どこから虐待の域なんでしょうか」・・・とか。


実力があれば通る意見も増えるし、まだまだ磨かれてない部分がたくさんあるヒロちゃんだからこれから見違えるんだろう。

しかし、陰口ってのはどこでもあるもので。そこばかり睨んでても仕方ないし、そういう“潔癖症”のようなところは自分で折り合いをつけないといけないね。

がんばれよ、ヒロちゃん。